藤原孝章研究室

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ジャーナル14
原発事故と停電
2011.03.20
(地震発生9日後)

 今回の東日本大震災は、阪神淡路大震災と比較して、1.地震の規模(震度M9.0)2.津波(10以上の巨大津波も)3.広域性(プレート型地震の複合)4.原発事故(東京電力の福島原発)の、4点において、その被害の大きさ、深刻度が決定的に違います。第二次世界大戦の敗戦直後に匹敵する国富の損失と再建の課題が待ち受けています。

以下は、その中の「福島原発の事故」について、ミクシィ日記に考えたことを書いたものです(池上彰さんの解説風に)。

Q1.そもそもなぜ原発は海岸にあるの?


A1.原発の構造が、今回の事故でもあきらかなように、大量の冷却水が必要だからです。日本の場合は、それを海水から得るために臨海部に設けられます(海水は直接注入するわけではない)。最悪の事故(レベル7)とされるチェルノブイリの原発は、内陸部にありましたが、冷却水用の貯水池がありました(Wikipedia「チェルノブイリ原子力発電所事故」)。日本では、火力発電所もその多くが臨海部に設けられていますが、これは、冷却水を海水に依存するのと同時に、原料の石油や天然ガスの輸入と関連しています。

Q2.火力発電所は都市部に近いところにあるのに、原発はなぜ都市部から遠いところにあるの?


A2.原発の立地は海岸部ですから、東京湾(たとえば東京ディズニーランドのある浦安)や大阪湾(たとえばユニバーサル・スタジオ・ジャパンのある桜島)に設けられてもよいのですが、原発の安全性(放射能汚染)立地への反対などから都市部が避けられています。逆に原発の立地を認めた県や市町村には多くの補助金が交付され、地域の振興にあてられています。

Q3.東京電力なのに、なぜ福島に原発があるの?


A3.福島県は東北地方で、東北電力の電気を使っています。福島の原発で発電された電気は東京電力に送られ、自分たちが使えません。首都圏(群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、山梨県、静岡県の富士川以東)の電力を賄うために使われます。今回の原発の事故は東京の人々の生活や産業のために福島県の人がある意味で「犠牲」になった形になっています。

Q4.関西電力も同じ?(関西なのに、なぜ福井県に原発があるの?)


A4.関西電力も同じなのですが、ただ福井県の原発の電気は関西電力のエリアとして福井県にも供給されています(ただし、原発が多く立地する美浜町以西。敦賀市より北は北陸電力)。一方、富山県の黒部第4ダムの発電所は、富山県ではなく関西に送られています。電気は家庭用と企業用(工場用)がその用途の大半を占めます。電気が不足すれば暮らしとともに産業(工場やオフィス)も打撃を受けます。

Q5.なぜ計画停電があるの?


A5.日本全体には多くの発電所があって十分にたりているはずなのに、なぜ停電なのか、疑問です。それは、日本の各電力会社の応援融通には限りがあるからなのです。今回の事故でも節電をしましょうというメッセージがありますが、関西と関東では電気の周波数が異なるので変換器の能力の関係から100万キロワットしか融通できないです。(関西電力 http://www.kepco.co.jp/notice/0315-1j.html
したがって、東京電力の供給能力の範囲でしか賄えないので、首都圏では計画停電になってしまうのです。 ちなみに、3月17日の朝日新聞の記事によると、東電の3月の平均電力需要が4700万キロワットで、現在の供給能力は3350万キロワットです。それをこえるかもしれないから計画停電をしているわけです。 (朝日新聞 http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103170445.html

Q6.福島原発は、計画停電をしなければならないほど、多くの電気を首都圏に送っていたの?


A6.その通りです。東電の原発依存率は28%ぐらいです。今回の地震と津波で停止した福島原発1号と2号と、同じく2007年の新潟中越沖地震で停止し、現在は7基中4基が稼働している柏崎原発をあわせての数字です。ですから今回、原発で得るべき電力のほとんどすべてを東電は失ったことになります。現在は火力と水力にほぼ頼ることになります(火力にしても、今回の地震と津波で福島県と茨城県にある4つの火力発電所が停止しました)。
(東京電力 http://www.tepco.co.jp/e-rates/officelist/powerplant/index-j.html
(日経新聞 3月19日記事「東電の発電能力、震災前7割に回復へ、2火力再開で」http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3EBE2E1E28DE3EBE2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2


Q7.現在、ぎりぎりの節電でやっていけるのなら、原発がなくてもいいのではないの?


A7.ここからがややこしいのですが、電気は貯蓄ができないので、つねに最大の需要(朝夕のラッシュ時、昼間の産業活動時などのピーク時)を見込んで発電計画が立てられ供給されています。みんなが寝静まる深夜のボトム時との1日における電力消費量の差や、オフィスや工場などが動いている平日とお休みの土日といった1週間の差、冷暖房がいる夏冬としのぎやすい春秋の一年の差があります。電力の供給には、この1日、1週間、1年のピーク時とボトム時の差を考慮する必要があります。

 1年でいうと、最大のピーク時は夏場で、しかも年々その電力需要が増しています。それを原発に依存しているのが日本の発電の現状です。「東電は通常、冬場で5000万キロワット、夏場で5500万?6000万キロワットの電力供給力が必要」だとのことです(日経新聞 3月19日記事)。この最大電力需要(夏場の余分な電力)を確保するために、現在は、「経済効率とCO2負荷の少ない」原発が全国的に建設されているともいえます。しかし、今回の事故で「安全と安心」という最も高価な対価を失ったといえます。当分、首都圏は計画停電と節電につとめることになりそうです。

参考ウェブサイト
・電気事業連合会「電気の情報ひろば」
  http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/juyou/index.html
・広島大学大学院総合科学研究科環境自然科学講座福岡正人「地球資源論研究室」(発電・電力)
  http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rene_D.html


補足
 今回の震災と津波では、同じ太平洋岸にある宮城県の女川原発の被害は、福島原発に比べるとはるかに小さかったようです。津波の高さの想定と地震の揺れへの対策がすすんでいたそうです。3月24日の産經新聞によると避難所にもなっています。とすれば、福島原発の事故は、単純な「天災」とはいえないようです。
 産經新聞 3月24日「原発、明暗分けた津波対策 女川は避難所」
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110324/dst11032422350077-n1.htm