藤原孝章研究室

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ジャーナル15
電気のあるくらしと停電
2011.03.25
(地震発生2週間後)

 福島原発は使用不能もしくは早期復旧が不可能です。とすると、首都圏では少なくとも2、3年は電力が恒常的に不足することになります。これはどのような影響を首都圏および日本社会に及ぼすでしょうか、考えてみました。(例によって、池上彰さんの解説風に)。

Q1.福島原発が使えないと、首都圏の電気はどうなるの?くらしや産業に影響はないの?


A1.福島原発は1号と2号の全部が稼働するとして920万キロワットといわれています。要するに、夏場のピーク時に必要な、あと約2000万キロワットの約半分を供給していたともいえます。しかし、福島原発の復活はほぼないと考えられます(あるいは早期の復旧は不可能)。当然、電化製品であふれた家庭にも、通勤手段の鉄道にも、通信情報のネットワークにも、工場生産にも、つまり電気なしでは成り立たない首都圏のくらしや産業に大きな影響を与えることが予想されます。

Q2.今後も首都圏では、計画停電がつづくの?


A2.計画停電は評判がよくないようです。事前の予告が悪く、突然の停電になった地域もあったようです。また余震も続くなかで、暗闇での揺れは恐怖感が増します。また、バックアップの電力のない病院などでは患者さんに大きな負担がかかります。さらに、これから夏場にかけて暑くなると冷蔵庫の電源が切れ、食料品も傷みやすくなります。列車の本数が減ったり、運行が中止になれば、通勤通学の時間が大幅にかかるし、ラッシュがひどくなります。ひいては帰宅困難にもなります。

もちろん、現在の工場は24時間稼働のところも多いので、停電があると日々の生産計画にも支障がでます。コンピュータなしでは仕事がなりた立たないオフィスもしかりです。これを見込んで(加えて原発事故による放射能汚染の危険性を危惧して)、すでに大阪のホテルや空きビルには、東京の本社機能を、社員ごと一時移転したり、オフィスを借りる動きも活発です。ですから、何としても停電はさける必要があります。
(2011年3月18日 読売新聞  http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110318-OYT1T00658.htm)
(2011年3月23日 読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110323-OYT1T00572.htm


Q3.停電を避けるにはどうしたらよいの?


A3.基本的には電力消費のピーク時とボトム時の差をなくし、平準化することです。
 1日でいえば、通勤や通学の時間をずらすこと、時差出勤や時差通学をすすめる。企業や学校、お役所でいえば、09-17時の時間帯を延ばすことです(たとえば12-20時など)。サマータイムの導入もいいかもしれません。1週間でいえば、土日の休業休日の分散化です。
 1年間でいえば、ゴールデンウィークやお盆休み、秋の連休もやめることも必要になってくるかもしれません。もちろん、これに日々の節電が加わってきます。冷房や暖房の温度を2度か3度は、上下させる必要もでてくるでしょう。
 今回被災して故障している福島と茨城の火力発電所を稼働させ(約400万キロワット相当)、他の点検中の火力も復旧させる必要がでてきますが、全体としての使用量を制限することもおきてきます(総量規制による使用電力割当)。

 今回の震災で、自動車やIT、情報通信産業における東北・関東のパフォーマンスの高さがわかりました(トヨタ、日産、ホンダ、日立、富士通、NECなど)。部品の供給がストップして、被災していない関西の工場の生産がストップするような事態もおきています。  電力使用の平準化や総量規制(電力割当)がすすめば、企業としても、工場の生産を、海外もしくは関西以西にシフトさせる動きも強くなってくるかもしれません。

Q4.原発にかわる電力供給は可能なの?


A4.今回の原発事故で、原発は「想定外」の地震や津波には対応不可能で、事故が起きたときのリスクは、原発が平時、安定的に供給する電力の対価としてはあまりにも大きいことがわかりました。したがって、今後、原発の建設をすすめるための合意をえることはきわめて困難です。

 今後の電力供給対策は、
(1)Co2排出量制限とは矛盾しますが、比較的大規模な発電が可能な火力(石油、天然ガス、石炭などの化石燃料)に頼る、 (2)水力発電では、山間部の電源開発はもう限界にきているので、小規模な低水位(低落差)発電を効率よく活用できるように技術的に開発する、 (3)太陽光発電の効率化、有機化(レアメタルを使わない)、風力、地熱、潮力などの再生可能エネルギーの活用する、また (4)関西と関東における電力周波数の違いを少なくし(変換量を多くし)、融通電力を大きくする、さらには、 (5)電気自動車の普及もみこんで、最終的に家庭用(小口消費者用)蓄電池の性能をアップさせ、夜間の電力や太陽光発電の電気を貯蓄できるようにする、などが考えられます。

Q5.日本の産業のあり方はどう変わるの?


A5.今回の震災は、原発事故も付随しておきてしまい、はからずも首都圏に集中しすぎた日本の産業、社会のあり方に反省を迫っています。1990年代の不況以後、グローバル化、情報化のなかで東京を中心とする首都圏に資本や技術、人口が集中していきました。

 国土交通省の「首都圏整備に関する年次報告(平成22年版首都圏白書)平成21年度版」(要旨)(http://www.mlit.go.jp/hakusyo/syutoken_hakusyo/h22/h22syutoken__files/youshi.pdf)によると、東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城、山梨の1都6県の首都圏は、人口が約4300万人で全体の33.6%、GDPが約195兆6400億円で全体の37.6%です。神奈川、埼玉、千葉の4都府県の東京圏では、人口3500万人で27.4%、GDPが約165兆円で、31.7%です(ちなみに近畿圏は人口16.3%、GDP15.6%、中部圏は人口13.6%、GDP15.0%)。

 こうしてみると、東京電力の供給範囲とほぼ一致する首都圏が、日本の人口、GDPとも3分の1を占めていることがわかります(東京圏でもおよそ3割)。世界都市・東京とはいえ、一極集中、大都市集中が災害にいかに弱いかを今回は示しました。

 東海地震、南海地震の発生も近い将来予測されますから、中部圏や関西圏も決して安全とはいえません。中部圏などは津波の危険性も高いです。阪神大震災を経験した関西は、地震に対する防災意識は高いが、それでももう20年近くになり、人々の記憶の一コマになりつつあります。内陸部での直下型地震も否定できません。日本の国土全体の工場立地、部品供給のサプライチェーンを多極化、分散化させ、首都機能の代替化を用意しておく必要があるでしょう。